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8. アメリカにおけるツベルクリン反応の取り扱いについて

 

日本で生まれた子供がアメリカの学校に入学または転入する時には、必ずツベルクリン反応(以下ツ反)の結果を提出する必要があります。また同様に、日本から来た成人が学校でのボランテイア活動などに参加する際にも、最近のツ反の結果の提出が求められます。ツ反は最寄りのhealth departmentあるいは医師オフィスにて受けることができますが、たとえ事前に日本でツ反を済ませていても、アメリカ入国後に再度検査を受けなければなりません。日本でのBCG接種の既往のある方がアメリカでツ反を受け、その結果が陽性であった場合の解釈について、アメリカに渡った子供やその家族と、日本の予防接種事情を知らないアメリカ人医師に大きな混乱と誤解を招いています。

ツベルクリン反応は結核の感染の有無を調べるための検査で、ツベルクリン液(PPD, purified protein derivative)を前腕に0.1ml皮内注射し、2-3日後に皮膚の発赤の状態を調べる検査です。PPDは人型結核菌を変性させた溶液で、細胞性免疫反応を起こすタンパク質抗原を含んでいます。ツ反は結核菌に対して生体の免疫感受性があるか否かをみる検査です。問題はこのPPDが、BCGで使用されている牛型結核菌にも反応することです。従ってツ反の陽性反応は、結核菌の感染以外にも、過去のBCG接種により免疫を獲得した場合にも見られるため、結核菌感染によるものか、BCG接種による免疫かの区別は容易ではありません。日本とアメリカではこのBCGに対する考え方が大きく異なります。

BCG(bacillus Calmette-Guerin)はウシ型結核菌を弱毒化した生ワクチンの一種で、これを人に接種すると、結核菌に対する免疫力がつきます。BCGは、乳幼児の播種性結核症(粟粒結核や髄膜炎など)の予防に効果のあることが分かっていますが、結核菌未感染の小児、成人の感染予防に有効か否かは明らかではありません。一般に、BCGには60%の結核予防効果があり、その効果が7-8年持続するといわれていますが、逆にいえば40%の人には効果がなく、しかもその効果は生涯にわたるものではないということです。そのため、1)ワクチンとしての予防効果が不確実であること、2)ツ反において疑陽性を生ずるため、結核感染の判定が難しくなること、などの理由により、アメリカでは現在BCGは行われず、ツ反によるスクリーニングのみが行われています。ツ反が陽性であれば結核に感染したと見なされ、その発病を予防するために化学予防すなわち予防的投薬が行われます。

アメリカでの結核の罹患率(人口10万対の結核患者の割合)は5.8で、日本の27.9と比べるとかなり低率ですが、それでも今年の4月San MateoのAragon High Schoolでみられたように、学校などでの集団感染が起こり得ます。そのため、アメリカでも各郡のhealth departmentは結核症蔓延の予防に積極的に取り組んでいます。

BCG接種がツ反の結果に及ぼす影響は、BCG株の種類、投与方法、年令、投与間隔などに依存するため、どの国でどのようなスケジュールで接種を受けたかによって異なります。世界中から人の集まるアメリカで、個人の接種歴を詳細に検討し、各人に個別の基準を当てはめ、判定をくだすことは実用的ではありません。従って、出身国によらず、共通の判定基準を設けることはやむを得ぬことかもしれません。例えば、アメリカでは1才以下でBCGが投与された場合には、それによるツ反の陽転は5-7年で陰性化するとのコンセンサスがあります。従って、1才以下でのみBCGが接種された例では、成人期でのツ反陽性は結核の感染と判定されます。但しアメリカでも、1)BCG接種後12ヶ月以内、2)生後1年以降に1回あるいは複数回のBCG接種を受けている場合、3)ツ反を繰り返し受けている場合(ブースター効果)、には結核の感染がなくてもツ反は陽性になりうると認められています。

アメリカではツ反は、活動性結核を発症する可能性が高く、予防的内服が有効であるグループを早期に見つけるスクリーニングの目的で行われます。そのようなリスクのある人ではBCG接種の既往に拘わらず、ツ反を受けるべきであり、その判定ならびその後のフォローアップの方法もBCG接種の既往の有無に左右されるべきでない、というのがアメリカでの基本的な考え方です。逆に、感染のリスクの低い人はツ反を受ける義務はありません。但し、集団感染の危険のある学校などでは、職員ならびに生徒を対象にツ反が義務付けられています。例えば、サンタクララ郡では1995年より、1)郡内のkindergartenに初めて入学する子供あるいは転入してくる子供(入学前の18ヶ月以内)、2)外部から郡内の学校(1st gradeから12th gradeまで)に転校してくる生徒(転校前の6ヶ月以内)は、必ずMantoux法によるツ反を受けなければならないと規定しています。これは、BCG接種の既往があっても、例外ではありません。この規則は郡(county)により異なりますので、各school districtあるいは管轄のhealth department に確認する必要があります。

BCG接種歴のある人でのツ反は、

1) HIV陽性者、活動性の結核患者に接触した場合、胸部写真にて古い結核の病巣がある場合は、BCG接種歴の有無に拘わらず、硬結が5mm以上で陽性、
2) 結核の罹患率の高い国からきた場合、結核感染のリスクの高い病気や要因がある場合、あるいは6歳以下の子供では、10mm以上の硬結で陽性、
3) BCG接種の記録がないか、BCG接種以降12ヶ月以上経過している場合には、上記の1)、2)のリスクがなければ、10mm以上の硬結で陽性、と判定されます。

一方、BCG接種後12ヶ月以内で、結核感染のリスクの高い病気や要因がない場合には、ツ反の硬結のサイズに拘わらず、結果は陰性と判定されます。参考として、結核感染のリスクの高い要因とは、結核感染者のいる可能性の高い施設(刑務所、ナーシングホーム、ホームレス避難所、ドラッグ・アルコール矯正施設)の滞在者、勤務者、あるいは医療機関従事者などのことです。一方、結核に罹りやすい基礎疾患とは、HIV陽性者、透析患者、長期ステロイド治療、免疫抑制療法、ホジキン病、白血病、硅肺症、糖尿病、急激な体重減少、胃切除後などのことです。

ツ反が陽性の場合、胸部写真の撮影が行われます。写真が正常で、症状がない場合には、化学予防がすすめられます 。又、一度活動性の結核病変が除外されれば、無症候のツ反陽性者に対して胸部写真の撮影を毎年繰り返す必要はありません。一方、写真が正常でも症状がある場合、および胸部写真に異常がみとめられる場合には、活動性結核の可能性が高く、さらに細菌学的検査など精密検査が必要となり、その結果により化学予防かあるいは活動性結核としての治療が行われます。

以上のように、日本とアメリカでは結核予防に対する考え方が非常に異なります。化学予防をするか否かは、最終的には患者さんあるいはご両親が判断されることになりますが、それを拒否した場合、通学あるいはボランテイア活動への参加を認められないということもあり得ます。アメリカに滞在する限り、やはりこちらの規則に従わざるを得ないというのが実情です。

 

 
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