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16. バッハのすすめ:ストレス解消のために

 

私はクラシック音楽を聴くのが好きです。

bachクラシック音楽を本格的に聴くようになったのは、大学に在籍していた頃です。友人に熱狂的なクラシックファンがいて、アルバイトをして貯めたお金をすべてレコードのコレクションにつぎ込んでいました。それを見ていて、自分でも興味を持ち、レコード芸術などの月刊誌や吉田秀和氏の評論などを参考に、いわゆる名曲名盤をこつこつと1枚ずつ収集していき、気がついた時には部屋の壁一面がレコードとCDで埋まっていました。

バッハなどの古典派から始まり、ロマン派、後期ロマン派の音楽を経て、新ウィーン楽派、現代音楽のブレーズに至るまで、ありとあらゆる作曲家の作品を聴きました。一時は、ワグナーやマーラーなどの粘着質な音楽にも凝ったこともありましたが、やがて食傷気味となり(マーラーの交響曲第9番は今でも聞きますが)、不惑の年を過ぎてからはもっぱら古典派の音楽に回帰してしまいました。

私の一番好きな作曲家はベートーベンです。ベートーベンの一生は、苦悩とそれを覆すための努力、精進の連続でした。ベートーベンの音楽は、生涯にわたり、進歩し続けました。交響曲第3番、第5番、ラズモフスキー弦楽四重奏曲などの傑作群や後期ピアノソナタなどを経て、彼の音楽は後期弦楽四重奏曲の5曲により、前人未踏の崇高さに達しました。弦楽四重奏曲最後の第16番では、すべてを達観したようなベートーベンの微笑みが眼に浮かんでくるようです。生涯、絶え間なく前進し続けたその人生は本当に素晴らしい。ベートーベンの音楽は、何か嫌なことがあって、気分が落ち込んだ時におすすめ。ちなみに私の好きなベスト3は、交響曲第3番、弦楽四重奏曲第9番(ラズモフスキー第3番)、ピアノソナタ第32番です。

一方のモーツアルトは生まれながらの天才でした。彼の作品は、幼少の頃の作品から、最後のレクイエムに至るまで、すべての音楽が完璧でした。彼の作品には、駄作がありません。無駄な音を一つとして見つけることができません。モーツアルトの音楽は、一聴すると明るさに満ちていますが、その奥底にはいつも「哀しさ」を聞き取ることができます。最後のオペラ『魔笛』がその典型例です。

バッハの音楽も初期の作品から晩年の作品に至るまで、極めて完成度の高い作品ばかりです。それにしても、一人の作曲家があれだけ数多くの傑作を残したことはまさに奇跡です。管弦楽曲、室内楽曲、各楽器のための無伴奏音楽、カンタータや宗教音楽等の声楽曲など、その作品はそのすべてに神々しさが満ち満ちています。敬虔なクリスチャンであったバッハの音楽を聴くと、自然と心が落ち着いてきます。何か面白くないことがあっていらいらしたり、夜遅く仕事が終わって疲れて家に帰った時など、その音楽を聴いていると、次第に安らかな気持ちになります。何か疲れ切った心のストレッチ運動をしているような、そんな気分になってきます。

私がクラシック音楽に興味を持ち始めたのは、そうあの不世出のバッハ演奏家であるカールリヒターの訃報に接したころでした。値段が高くて手にすることのできなかった彼のマタイ受難曲の旧盤をようやく手に入れて、始めて聴いた時の震える様な感動は、今でも忘れることはできません。

バッハの作曲した音楽は、非常に多岐にわたります。何から聴き始めて良いか迷う方、まず何かの器楽曲から始めてみてはいかがですか。チェロかバイオリンがお薦め。チェロであれば、もちろん『無伴奏チェロ組曲』の6曲。その曲集のすべての作品が素晴らしい。多くのCDでは、全6曲が2枚組のセットに収まっています。録音の質が気にならない人は、やはりカザルスの演奏。なにかごつごつしていますが、長らく忘れられていたこの曲を再発見した彼が、多くの人にその素晴らしさを伝えようとした気迫が伝わってきます。新しい録音では、やはり、ロストロポービッチヨーヨーマ。この二人の演奏は、DVDでも入手できます。息子のチェロの先生がロシアでロストロポービッチに師事していた時、この曲は「舞曲(踊りのための音楽)」であることをさかんに強調していたとのこと(ちなみにロストロポービッチは非常に几帳面な人らしい)(*世界の音楽界の至宝であるロストロポービッチ氏ががんとの闘病の末、ついに4月27日に逝去されました。本当に残念です。謹んでご冥福をお祈りいたします)。ヨーヨーマは新旧2つの録音がありますが、私は若々しい才気に満ちた旧盤の方が好き。流れるような演奏です。昔は、ビルスマのバロックチェロによる旧版もよく聴きましたが、今はあまり好きではありません。シュタルケルは少し力み過ぎ。私にとっては、繰り返し聴きたくなるような演奏ではありません。最近気に入っているのが、シャフランの演奏。録音は古いが、ロマンチックなその演奏に傾倒しています。シャフランは、ロシアでは、ロストロポービッチとならぶ2大巨匠とされていましたが、西側に亡命したロストロポービッチのその後の派手な活躍の影にかくれて、長らく西側では過少評価されていた人。シャフランの無伴奏はDoremiレーベルで発売されています(ちなみに旧ソ連崩壊後、ロシアの隠れていた録音が容易に手に入るようになり嬉しい限り。大戦後ソ連に持ち去られていたフルトベングラーの戦時中の貴重な録音なども見つかっています)。

バイオリンソロでは、やはり『無伴奏バイオリンのためのソナタとパルテイータ』。ハイフェッツ、シゲテイなどは少し古過ぎる感じ。ここはありきたりですが、やはり真面目なシェリングでしょうか。やや新しいところでは、パールマンとクレーメル。彼らの演奏のテクニックは完璧です。ただ、クレーメルは癖のある演奏ですので、初めての方にはあまり向いてないかもしれません。無伴奏の全曲を聴くのはどうもという方は、パルテイータ2番のシャコンヌだけでも聴いてみてください。心のストレッチ運動となること請け合いです。

ピアノ曲集では、やはりグレングールド。彼のバッハ演奏は、すべてのCDを揃える価値があります。シフなどの演奏も持ってますが、やはり物足りない(ごめんなさい)。1枚選ぶとしたら、月並みですが『ゴルドベルグ変奏曲』の旧盤。若いグールドの才気が溢れ出ています。疲れはとれませんが、元気はでてきます。グールドの鼻歌まじりの独特のスタイルがどうもという方は、リヒテルの『平均率クラヴイーア集』はいかがでしょうか。この曲集は、バッハが自分の子供達にピアノを教えるために作曲したもの。ピアノ曲の旧約聖書と呼ばれる48曲(ちなみに新約聖書はベートーベンのピアノソナタ集)を、リヒテルはとてもロマンチックに仕上げています。長い残響を伴った録音も優秀です。

オルガン曲は、バルヒャのアルヒーフの全集を持っていますが、まだすべての曲を聴いていません。バッハのオルガン曲を何か一曲という人は、誰の演奏でもいいですから、『パッサカリアとフーガ』を心して聴いてください。「この曲をまだ聞いたことのない人が羨ましい。その人の人生には、この曲を始めて聞く喜びが残されているから。」と誰かがいったとか。

室内楽曲では、『音楽の捧げもの』などもありますが、疲れを癒してくれるのにお薦めは、ハープシコード伴奏付きの『フルートソナタ』。演奏は、ニコレのアルヒーフ版(リヒターの伴奏)か、ランパルの演奏。

『管弦楽組曲』や『ブランデンブルク協奏曲』あたりは、リヒターやピノックの演奏をもっていますが、私はあまり聴きません。但し、昨年グラモプォンより、リヒターのブランデンブルクのDVD(ブランデンブルグ協奏曲)がでて、これは非常に楽しませていただきました。

声楽曲では、何と言っても『マタイ受難曲』、『ヨハネ受難曲』の2曲。これは何と言っても、リヒターの演奏につきます(前者は旧盤)。これらの不滅の名曲の不滅の演奏が、その他の数曲と合わせて、Sacred MasterpiecesとしてアルヒーフレーベルからCD10枚組の廉価版ででています。また昨年グラモフォンより、何とリヒターの演奏による『マタイ受難曲』、『ヨハネ受難曲』、『ロ短調ミサ曲』の3曲の全曲のDVDが発売になりました(グラモプォンさん、ありがとう)。ただ、これらの神聖なる大曲は、生涯に何度も繰り返して聴けるものではありません。体調の良い時に一気に聴き通しましょう。心地よい疲れと心に染み渡る深い感動を保証します。

現代社会は、仕事上のストレス、学校でのストレス、夫婦関係や親子関係をめぐっての家庭内のストレスなど、精神的な緊張や疲労を引き起こす原因で溢れています。こうした精神面でのストレスが、体調不良の原因となっていると思われる患者さんも少なくありません。精神安定剤、抗うつ剤などの内服に頼る前に、バッハの音楽を心の清涼剤として一度試してみませんか。

 

 
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